はじめに
— 黒兎そよ (@katatumuri) 2018年5月27日
ってのを先日やったので手癖でちょっと書いてみた。
このシナリオを遊ぶにはクトゥルフ神話RPGルールブックが必要です。利用はいつも通りフリー。リプレイとかしてもいいのよ。遊んだ報告はツイッターとかよろしく。
適当に1on1のPL1人用にしてみた。
探索者にはシナリオ用に事前設定を用意する。それらの設定を踏まえた上で探索者を作成すること。
//要素10個を 整理
- こたつ に当たって
- 酒 が飲める年齢になってから
- 追憶 で事件を思い出す。
- 学校 事件は学生時代
- 大仏 修学旅行とかそれくらいしか思いつかんな
- 結膜炎 プールに入れないとか目が充血をどう使うか
- 過去の未解決事件の真相 キー
- 遅すぎた再会 PCとNPC 過去の事件から10年後とかが良さそう。
- 雨 嵐で館に閉じ込めよう
- 翼の折れた鴉 死骸か何かの意匠として使うか。
クトゥルフ神話TRPG1on1シナリオ『遅すぎた再会』
シナリオ構造
このシナリオは過去の回想パートと現代パートの2パートあります。2話に分けて遊んでも良いでしょう。
過去回想は主人公の高校時代を設定していますが、回想なので現代パートのキャラクターのまま遊んで良いとします。もしもパートごとにキャラクターの年齢、体格、技能、職業などを変更したい場合はKPと相談してください。
また技能判定や減少する正気度などは適当にKPが決めてください。セッション中のダイス目など見て適宜変えてもいいんじゃないでようか?
シナリオは手癖と走り書き程度なのでKPが足りない部分は(NPCのステータスや神格候補はルールブック等からKPが適宜それっぽいのを)補ってください。まぁ、当たり前でしょうけどそんな感じでよろしくおねがいします。
●PC設定
かなりキャラクター像に影響を与える設定です。注意してください。
作成するPCは成人済みとする。
あなたは数年前に離れた故郷に帰ってきた。
久々に再開した友人らと卓を囲み、酒を飲んでいると昔の話が始まる。
それは高校時代の出来事で、あなたにとっても苦い記憶だ。
あなたは高校時代、峰岸晶子から告白されていた。しかし返事をする前に峰岸は学校をやめ、あなたも故郷を離れることになってしまったという過去がある。
●導入1 帰郷
ある冬の日。あなたは故郷へと戻ってきました。
雪の降る中、駅に着くとそこには懐かしい顔が出迎えてくれます。
太田浩一「よぉ、久しぶりだな」
駅前に止めた車から手を振るのはあなたのかつての級友、太田浩一でした。
あなたを迎えに来てくれた太田の車に乗り、太田のアパートまで行きます。
道すがら懐かしい街の風景と変わってしまったいくつかの場所を眺めていると、懐かしい人物、峰岸晶子が黒塗りの車に乗って去って行くのを見ます。確認をとることはできませんが、太田に話を聞くと「懐かしいな。峰岸晶子だろ? たしか結婚したんだよ。今は佐山だ。佐山晶子」と言います。
あなたは高校時代、峰岸晶子から告白されていました。しかし返事をする前に峰岸は学校をやめ、あなたも故郷を離れることになってしまったという過去があります。
そうこうしているうちに太田のアパートへと着きます。
以下シナリオギミック含むためKPのみ読み進めることを推奨。
NPC
- 太田浩一(おおたこういち): あなたの友人。高校時代のクラスメイト。まぁ、回想用の端役。
- 藤原美咲(ふじわらみさき): あなたの友人。高校時代のクラスメイト。同じく回想用の端役。
- 佐山晶子(さやまあきこ): あなたの友人兼恋人未満。かつて告白してきたが、あなたが返事をする前に学校をやめている。容姿端麗で誰からも好かれるような女子だった。ある事件の容疑者。旧姓:峰岸(みねぎし)。
- 雨宮美和(あまみやみわ): 晶子のクラスメイト。目立たない女子。ある事件の容疑者でもある。
- 橋本幸恵(はしもとゆきえ): 晶子のクラスメイト。晶子に反目していた。クラス内カースト上位の当時のギャル的女子。ある事件の容疑者でもある。
- 井上芳樹(いのうえよしき): 晶子のクラスメイト。不良。幸恵と付き合っていたという噂を後で知る。
- 佐山銑十郎(さやませんじゅうろう): 佐山の家長。年の離れた晶子の夫。地元でも有力な家であり様々な事業に成功している。子供たちは自立し、後妻として晶子を迎えた。
- 峰岸徹(みねぎしとおる): 晶子の父親。浮浪者。
●導入2 太田のアパート
太田のアパートでは級友の藤原美咲が待っています。あなたの顔を見つけると嬉しそうに話しかけてくるでしょう。上機嫌な藤原ですが『こたつ』の上には既に缶ビールが二つ開いています。
藤原「うわ~、久しぶり。もうこっちには帰ってこないかと思ってたよ」
太田「藤原、お前もう飲んでるのかよ。待ってろよ」
そんな二人に迎え入れられます。
※ここまでの導入はNPCとあなたが仲の良いクラスメートだったことの演出と確認です。
太田の家の『こたつ』にあたりながら、鍋と『酒』で腹を満たしていると思い出話が始まりまります。それは懐かしい高校時代の『追憶』。
太田「しっかし、お前とこうして『酒』が飲めるとは思わなかったぜ」
藤原「そうよね。卒業と同時にすぐ街を出てっちゃったからさ」
太田「そういや、こうやって机を囲んでいると高校時代を思い出すな」
藤原「ホント。ほら見てよ、懐かしいでしょ」と卒業アルバムを開きます。
太田「そういや俺たち修学旅行も一緒だったよな。ほら『大仏』の前で撮った写真あるぜ」
藤原「わかーい」
この場の面子は『学校』でもよくつるんでいて修学旅行も同じ班だったのです。
太田「そういや、あの事件覚えてるか? あの未解決事件」
藤原「あの……もしかしてあの修学旅行の集金が盗まれたって奴? 犯人分かったんじゃなかったけ?」(古い時代を想定しているので集金がまだ学校で行われていた頃として書いています。今は振り込みとかでしょうかw)
太田「いいや、憶測だけで結局は犯人がわかったわけじゃないんだよ。だが、ちょっと妙な話があってな。ほら、お前が峰岸のこと聞いてきて思い出したんだよ」
そんな太田の酔いの戯言から、あなたは高校時代のある事件を思い出すことになります。
■回想パート
●高校時代パートのキーパリング
メタ構造としてセッション中の高校時代を思い出しているというパートなのでキャラクター自体は現在のまま遊ぶとしています。完全にパート分けしたい場合は、高校生キャラを作っておくでもいいでしょう。
KPは適宜、判定を絡めたり絡めなかったりしつつ情報を開示していきましょう。台詞などをもとに簡単に手癖で回してください。
なお、最後に犯人をPLが「決める」ギミック(推理の犯人として決定する)のでメモを取っておく事。
●未解決事件とは?
あなたたちが高校生の頃、ある夏の日にクラスの集金が盗まれた事件がありました。それはあなたたちのクラスの話ではないのですが、当時は全校生徒の興味を惹く一大事件だったのです。
盗難のあったEクラスではその時間は体育で女子はプール。男子は暑い中、マラソンをしていました。
太田と藤原は卒業アルバムの写真で人物の顔を確認しつつ話しはじめます。
藤原「それで犯人候補に挙がったが、確か峰岸さんだったのよね」
という藤原の言葉にあなたは驚くかもしれません。
藤原「あ~、女子の間ではそういう噂があったのよ」
太田「俺も後から知ったんだけどよ。峰岸の親父さん事業に失敗して、どうやら金に困ってたらしいんだ」
藤原「結局、峰岸さん退学になって決着だと思ってたわよ私」
太田「いや、峰岸の他にもあの時、容疑者は居たんだよ」
太田の話では当時、容疑者とされていたのは以下の3名でした。判定で動機やアリバイなどの情報を過去に聞いたことを思い出したり、今の太田から聞いたりしたという体で上手い事推理っぽくしてください。一応、太田が太田なりの解答を持っているので、PLが困るようなら最後に太田の意見を話しましょう。
●容疑者NPC
- 峰岸晶子 動機:父親の事業の失敗で金に困っていた。 アリバイ:なし。保健室で寝ていたが証明する人は居ない。 備考:自主退学は犯人だからと生徒たちは思っていた。 人物像:容姿端麗、もとは優等生で皆の輪の中にいるような生徒だったが、事件の数か月前くらいから暗い雰囲気になり様子がおかしかった。
太田「これも後から分かったんだが、どうも事業に失敗した事で家庭内暴力にあってたらしい」
藤原「そう言えば、峰岸さんの事を目の仇にしてた子いたじゃない。たしか騒ぎ立てたのってその子でしょ?」
太田「そうだ。だから容疑者の二人目はその橋本幸恵だ」
- 橋本幸恵 動機:峰岸への嫌がらせ アリバイ:あり。プールの授業に参加していた。 備考:峰岸とは別のクラス派閥を率いていた騒がしい女子。峰岸の家の事も知っていたのか、女子の間では密に橋本が峰岸に「嫌がらせ」を行っていたのではと噂されていた。
藤原「でも、アリバイはあるのか。誰かにやらせたとかじゃないわよね?」
太田「お前鋭いな。まぁ、もう一人可能性が出て来たのが雨宮って奴でな。実はあとから分かったんだがプールの授業は休んでたらしくてアリバイが無かった」
藤原「良く知らないけど図書委員だったけ?」
太田「そうそう」
- 雨宮美和 動機:なし。 アリバイ:プールを休んでいた。 備考:『結膜炎』 人物像:控え目で目立たない生徒。図書委員で放課後も良く本を読んでいる姿を思い出せる。
太田「でだ。ここからが本題でな。もう一人候補があがってきたんだよ。Eクラスの井上芳樹を覚えてるか?」
- 井上芳樹 人物像:授業をサボりがちな不良少年。喧嘩も強く他校へも顔が利くと言われていた。
太田「アイツ、1年くらい前に交通事故で死んじまったんだけどさ。妙な話をしてたって後輩たちが言っててさ」
井上が話していたのは何かに追われているような気がするというものでした。もちろん気のせいかもしれないのですが、日に日にその感覚が強くなり、後輩たちの目にも衰弱しているのが分かったようです。
太田「それで事故にあう前に「あの女に頼まれてもあんなことするんじゃなかった」って言ってたらしくてな」
藤原「あぁ、そう言えば橋本さんと井上くん付き合ってたって言うもんね」
太田「……やっぱ女子はそういうの鋭いな。俺はその後輩から聞いて初めて知ったよ」
藤原「でも、井上くんは峰岸さんに告白して振られたって聞くけどね」
太田「マジか……知らなかったぜ。お前は知ってたか?」
▼太田の答え合わせ
太田「とまあ、言うわけでさ。俺は橋本が井上に指示して集金を盗んだってのが真相だと思うんだよ。どうだい名推理だろ?」
あなたもここまでの情報で納得するなら推理はおしまいになります。
これで高校パートと回想は終わり、太田の家での会合は終わりあなたは実家(または取っていた宿(ホテル))へと行き、この日は終わりです。
▼別の推理材料
あなたがまだ何か違和感を覚えるのなら、もう少し過去について思い出してもいいでしょうし、今の状況を聞いてもいいです。
KPは判定などを使い以下の情報を与えてもいいです。
- 佐山晶子 現在:佐山の家に嫁いだ後、多数の会社の代表を務めている。夫である銑十郎はすでに老齢で晶子との間には子は無い。(KP次第でもいいが)
- 雨宮美和 備考2:当時、怪しい海外の本を読んでいる姿を目撃されている。現在:晶子の経営する佐山の会社で晶子の秘書をしている。(※雨宮は魔導書を持つ黒幕として設定してあります)
- 橋本幸恵 井上とは別れ、どこか大学へ行ったという話ですが現在は知られていない。(後に佐山の館に行くと女給として働いている)
あなたの別の推理を披露したあとは正解は過去だから分からないがその可能性もあるとして推理は終わりになります。とりあえずKPは犯人推理がだれだったかメモしておきましょう。そして太田の部屋から立ち去りその日を終えましょう。
なお、過去編の情報は現代パートでも太田らに連絡を取ることで確認できます。メモし忘れたとかでもKPは柔軟に連絡したら分かるという判断をしてよいでしょう。
■現代パート
●導入 再会
太田たちとの会合の次の日、あなたは街でばったり晶子と出会います。高そうなブランドもののレディーススーツやカバンに実を包みやや派手なネックレスや指輪といういで立ちにあなたは少し戸惑うかもしれません。
あなたはこれから帰るつもりではいましたが、久々にあった晶子に話をしようと誘われます。
晶子「~くん。久しぶりね……また会えるなんて思ってなかったわ」「ねぇ、少し時間いいかしら。ちょっと話しましょうよ」
あなたが断るようなら「ならせめて連絡先だけでも教えてよ」と食い下がります。あなたがしぶるようなら晶子は少し寂しそうに去っていきます。「ごめんなさいね。久しぶりでついはしゃいじゃって、もう、私たち別の時を生きてるんですものね」
晶子の自動車に乗り(運転手はサングラスをかけた女性)、小高い丘の上の佐山のお屋敷へとたどり着きます。
誘いを断った後、あなたが帰りの駅に着くと一通のメールが届きます。それは連絡先を交換した晶子からで「助けて」と一言だけ書いてあります。もし気になったのなら屋敷へと向かうと良いでしょう。連絡先を交換していなくても晶子から電話が入ります。
どちらにしろ「助けて」という言葉を無視したならゲームは終了となります。後日、佐山家の自動車が土砂崩れに巻き込まれたと太田から聞かされます。
助けに向かう場合は屋敷へとたどり着きますが、惨劇の場面から始まります。
なお、過去の告白についてははぐらかしますが、あなたが何か答えたら「もう昔の事よ」と言います。
●現代の晶子について
父の事業の失敗で多額の負債を抱えていましたが、佐山の家に嫁ぎ(政略結婚と噂される)その負債は返済されました。峰岸の会社は佐山の企業として大きく成長しました。しかし、父親は会社の金を持って行方をくらまし、母は心労で亡くなっています。
残った晶子は佐山の多数の会社の経営に関与しつつ、佐山の義理の息子たちとは距離を保ち生活しています。
佐山銑十郎は老齢で今は屋敷からはめったに出歩かないようですが、若い頃子供たちに厳しくあたっていたため現在は子供たちもあまり近寄りません。彼らは自分の利権を守るために必死です。
佐山家は銑十郎が一代で起こした大企業体です。ただし景気低迷の憂き目にも会っていましたが、数年前丁度晶子が嫁いだ頃からまた企業買収などで盛り返しています。
老齢の銑十郎は色を好む精力的な人物でしたが、後妻とした晶子を可愛がる反面なぜか手出しはしていなかったようだと言われています。そのため、実は隠し子説や銑十郎の性癖が変わったなど様々な憶測を呼んでいます(とか適当に書く)。
●佐山のお屋敷
佐山の家に着いたあなたが屋敷の一室で晶子を待っていると、サングラスをかけた秘書がお茶とケーキなどを持ってやってきます。(晶子の自動車を運転していたのも彼女)
雨宮「あぁ、あなたでしたか。晶子さまが嬉しそうにしてたのでどなたと再会したのかとおもっていましたが」
「あなたのことは高校時代にも晶子さまから聞いていましたから」(少し含みをもった言い方をしますが、雨宮は晶子があなたに告白したことを知っているようです)
「今日はお手伝いさんが出払っていまして、私ともう一人しか給仕が居ないんですよ」
(雨宮に気がついたら)「よく私の事を覚えてましたね。わたし、あまり目立たない生徒だったと思うのですが」
PLが気が付かないようなら名刺を差し出し、晶子の秘書の雨宮美和だと分かる。
- 雨宮 備考:実は高校時代より前から晶子とは仲が良かった。
過去の事件の事を聞くと雨宮は無言になります。目元はサングラスでかくれていますが奇妙に薄く笑います。そして片手にもったケーキナイフを激しくケーキに突き刺す姿に一瞬怖気が走ります。(SAN 0/1の正気度を失う)
▼
ほどなくして晶子は昔の面影を思い起こすような落ち着いた服に着替えてやってきます。それと入れ替わるように雨宮は奥で控えていますと去って行く。
二人になった部屋で晶子は昔を懐かしむようにあなたに話しかけます。
晶子「懐かしいわね。こうやってまたあなたと一緒にいられるなんて」
しばらくすると雨宮が「晶子さまお電話が入っております」とやってくる。晶子はしばらくくつろいでいてと部屋をあとにします。
その間、待っていることもできますし、部屋から出ることもできます。
●館の概要
客間の外に出るなら以下の場所へと行けるでしょう。
- 廊下 各部屋を繋ぐ。
- ホール(階段) 屋敷の主である銑十郎の大きな肖像画がかけられている。
- 無数の部屋:どの部屋も高級な調度品であふれているが人気は無い。
- 中庭 バラの庭園が広がっている。
■廊下
長い廊下。昼間だと言うのになぜか薄暗く感じる。
あなたが廊下を歩いているとガシャンと何がが割れる音がする。(部屋で待っている場合は外から音がして何やら声もするとし、廊下へ出るよう誘導)音の方へ行くと給仕服の女性が割れた壺を前に雨宮に叱責されている。雨宮「またあなたは、これが一体どれだけの価値のあるものか分かっているの? あなたの仕事では一生掛かっても支払えないものよ。それを!」
女性「すみません、すみません……」
雨宮はあなたに気付かずにそのまま立ち去ります。あとに残った女性は嗚咽をこらえながら壺を片付けています。
もし、あなたが傍によるなら女性は「申し訳ありませんお客様」と何度も頭を下げます。
判定に成功するとすぐにあなたはそれが橋本幸恵だと気が付きます。もしあなたが名前を呼ぶと橋本はあなたが同じ高校の生徒だったことを思い出しますが、今の状況を恥じているのかうつむいてしまいます。
- 橋本幸恵
現在:父の会社が佐山に買収され、その後立て続けに不幸に見舞った彼女は晶子に拾われ屋敷の給仕として働いている。上司にあたる雨宮は彼女に冷たく当たるようだ。井上とは高校卒業後は会っていないようだが事故死した事は知っており、その事故の話を聞こうとすると怯えた様子を見せます。
橋本は現状に対して晶子へ嫉妬と逆恨みを感じつつ、雨宮の態度などにも怒りを覚えています。しかし、生活のためぐっと堪えています。
橋本は弱ったようにあなたにもたれ掛かり涙します。そして「~くんってこんなに優しかったんだね。私、好きになっちゃうかも」と誘惑してきます。
■無数の部屋
人のいない部屋が基本的に続きますが調度品は高そうなものばかりです。
鴉の扉
数か所回った後に金の鴉が描かれた扉の前にたどり着きます。その部屋を覗くと薄暗い部屋に老人が座っています。
階段の肖像画を見ていれば銑十郎だときがつきますが、その顔には精気はなく虚ろな目をしている。
辺りを見ると金色の『折れた翼の鴉』の像が棚の上に置かれていることに気が付きます。扉にあったデザインと同じですが片方の羽が90度折れています。それに近づくようなら老人が急にわめき暴れはじめます(雨宮がやってきて安定剤を打つ)。そうでなくとも、あなたが近づくと何かうわごとのように呟いているのが分かる。その声に耳を貸すと得も言われぬ気味悪さを感じます(SAN 1/1D3を失う)。
晶子「こんなところに居たのね」「あぁ、夫の銑十郎よ。今はもうこんな風に一日中ぼんやりしているんだけどね……それよりも別の部屋でお話しましょ」
部屋からでていく際に銑十郎は宙に手を伸ばしうわごとを繰り返しています。
■中庭
銑十郎に会った後、または部屋に残っていた場合、晶子はあなたを中庭へと連れ出します。
もしも先に中庭にあなたが訪れていたら晶子は「こんなの所に居たのね。丁度良いわ、中庭を案内するわね」と連れ立て歩きだします。
バラが美しく咲き、手入れもしっかりと行き届いている感じがします。しばらく歩いたら中庭中央の小さな東屋(あずまや)で休息を取ります。中庭は美しいのですが、所々に奇妙な石像が隠れるように置かれています。
晶子にそのことを聞くと石像の事は不思議そうにしますが、庭の設計は雨宮によるものだと話してくれます。また夫である銑十郎が世界各地から不思議な石像や骨董などを集めていたからそれらではないかと話します。
東屋で休んでいると女給(既にあっていれば橋本幸恵だと分かる)がティーセットを持って現れます。晶子は橋本に「ありがとう橋本さん」と笑顔を見せます。あなたが橋本を観察していれば橋本の目に浮かぶ嫉妬の色を見るかもしれません。
▼
中庭のシーンの終わりに『雨』が降り始めます。
またはあなたが帰ろうとするか頃合いを見計らい(笑)『雨』が降り出します。次第に嵐になり交通規制がかかります。あなたたちは屋敷に閉じ込められることになります。以下へ。
嵐の中へ出ればそれ相応の危険があるとKPは伝えていいでしょう。嵐に煽られけがをし、屋敷に運び込まれるという形で結局外には出られないなど上手い事しましょう。
●館に揃った容疑者たち
雨宮「もうしわけありませんが、嵐が過ぎるまではお屋敷にとどまりください」
外の嵐で土砂崩れが起こり佐山の屋敷から街へと降りる道が分断されてしまっています。夜になり嵐はますます激しくなります。
- 晶子
あなたと一緒にいられると晶子はまるで少女のように喜びます。もしあなたが苛立ちを覚えるようなら口に出してもかまいませんが、晶子はあまり取り合わず浮かれているようです。
- 雨宮
雨宮は(過去の告白の件を知っているため)「久しぶりの再会なのだから少しは晶子さまにやさしくしてあげて欲しいわね」と言います。なお雨宮は仕事場にしている書斎に居るか、銑十郎の部屋へ行っていることが多くなります。
■書斎へ入ると中は仕事の道具や本だながありますが、その中に古ぼけた革張りの手帳があります。表紙は『翼が折れた鴉』が描かれ、鍵がかかっているため中は見ることができません。(なお、持って行くこともできますが、無くなれば怪しまれるものですのでKPは注意しましょう)
- 橋本
橋本はあなたと晶子のディナーを運んできます。出来合いの物を温めているだけの料理ですが、一流のレストランレベルのご馳走です。橋本は晶子が居ない場所ではあなたに積極的にアプローチをかけてきますが、判定などで晶子へ対する嫌がらせにあなたを誘惑していると分かって良いでしょう。なお図星をつかれれば赤面して去って行きます。また対応によってはあなたに対して怒りを覚えるかもしれません。
- 銑十郎
嵐の中、銑十郎の部屋への傍へと行くと恐ろしい老人のうめき声が聞こえてきます。中では何かに恐れを抱いて老人が泣き叫んでいるのです。部屋を覗けば中で雨宮が老人をおさえ、注射を打っているのを見つけます。
そのあまりの形相にあなたは不安を覚えるかもしれません。(SAN 1/1d6を失う)
雨宮「時々、今みたいに取り乱すのよ。だから精神安定剤を打ってるの」「それにまだ死んでもらってはこまるのよ……あなたには関係のないことだけれど」しばらくして銑十郎は落ち着きます。
覗かなくても部屋から出てゆく雨宮を見つけます。声をかけなければカバンを持った雨宮はそのまま立ち去ります。
●惨劇
夜の屋敷。辺りは嵐の音がうるさい。
(助けてのメールの後はここにたどり着く。屋敷内の情報が不足しているためかなり厳しいはずだか適宜やろう)
*なおここで回想シーンで犯人とされていた人物によって展開が変わることにしていますが、なんか適当に組み合わせたり変更すればいいんじゃないでしょうか。
惨劇の場面に出くわしたら(SAN 2/1d6+1を失う)とします。
■1晶子の場合
屋敷で夕食を終えた後、しばらく客室でくつろいでいるとあなたの部屋に晶子が訪ねてくる。
晶子はあなたにもたれ掛かるようにして「ねぇ、あの時の返事をきかせてよ」と言う。既にあなたが答えていたら「もう一度、やり直せないかな」と言ってくる。
あなたが否定的な台詞を言うと「私、あなたについて行きたくてあの日、お金を盗んだのよ。今でも間違いだったと思う。けど、本気だったの」と『過去の未解決事件の真相』を語ります。
肯定的な返事をしたら晶子は嬉しそうにあなたに唇を重ねてくるでしょう。
あなたはそこで晶子のスカートの裾が赤く染まっていることに気が付きます。それは血だと気がつくかもしれません。
晶子「もうこの屋敷には私たちだけ、大丈夫。教えてもらったのよ雨宮に。永遠に一緒に居られる方法を」
「橋本さん? だってあなたに色目を使うんですもの。居なくなってもらった方がいいでしょ」と笑います。
晶子は後ろでに持ったナイフをとりだします。抵抗すればナイフを奪う事もできるでしょう。気絶させるかあなたが逃げるかするのが賢明だと思われます。
雨宮に聞いたという言葉からあなたは雨宮が怪しいと気が付くでしょう。気付いていなければKPがぶっちゃけてしまってもいいですので雨宮の書斎へと向かわせましょう。
ここら辺の処理をしたら黒幕の内容へつなげましょう。
■2雨宮の場合
屋敷で夕食を終えた後、しばらく客室でくつろいでいると悲鳴が上がる。雨の音に薄れているが確かに聞こえた。部屋を出ると以下の状況が広がっている。(出ないなら出迎えに行く)
ホールで銑十郎が橋本の喉元に調度品の刀を刺している場面に出くわす。(もしくは血まみれの刀を持った老人が歩いている)
その光景に晶子は座り込んでいるが雨宮はうすら笑いを浮かべていると気がついても良い。
銑十郎は次はあなたに向かって刀を振り回してきます。取り押さえられれば銑十郎は気絶します。(死亡したらまぁ、適宜)
その後、晶子は寝込んでしまうので3の展開のようにつなげてみましょう。
■3橋本の場合
屋敷で夕食を終えた後、しばらく客室でくつろいでいると悲鳴が上がる。雨の音に薄れているが確かに聞こえた。部屋を出ると以下の状況が広がっている。(出ないなら出迎えに行く)
逆上した橋本が晶子に襲い掛かっていたのだ。腕をナイフで切られ血を流した晶子が青い顔で座り込んでいる。
なんとかしてナイフを奪い抑え込めば橋本は大人しくなるが、うわごとのようにぶつぶつと繰り返している。
橋本「折角、犯人に仕立て上げて学校から追い出したのに、なんでまたあんたが私の視界にいるのよ!」
と過去の犯行を認めるような発言をする。
取り押さえられた現場に駆けつけた雨宮は凄まじく怒りをあらわにして橋本を殴りつけます。あまりに尋常じゃない様子であなたが止めなければ殺しかねません。取り押さえた橋本は外からだけ鍵のかかる倉庫などに一時的に閉じ込めておくことになります。
幸い、晶子のケガが命に別状はありませんが晶子は寝室で休むことになります。晶子はあなたに手を握っていて欲しいとせがみます。晶子が寝付くと雨宮はあなたにも休息を取ると良いとお茶を運んできます。
雨宮「まさか、あの馬鹿女がここまでするとは予想外でした。本当にありがとうございます」「ところであなたは晶子さまのことをどう思われているのです?」
と質問してくる。あなたが否定しても肯定しても雨宮は表面には出さないが不服そうである。
雨宮「あとは私が看ているから、あなたは少し休んでください」と晶子の部屋へと去って行く。
なお、余程慌てていたのか雨宮はキーホルダーを机の上に忘れて去っていく。
(もしキーホルダーを渡しに晶子の部屋へ行っても雨宮の姿はないためキーをあなたがもっているようにKPは促すこと)+(雨宮の書斎には雨宮は居ない。そして手帳を手に入れられるようにKPは調整すること。このキーで開きそうだと分かって良い)
ここら辺の処理をしたら黒幕の内容へつなげましょう。
■4それ以外としていた場合
屋敷の窓が割られ侵入者が居るという状況になる。探索していくと厨房(食堂でも)に薄汚れた男が食べ物をむさぼっている。それを見た晶子は厳しい顔で「お父様……」と呟く。
峰岸徹(父)「あぁ、晶子。なぁ、金くれよ。こんなに大きな屋敷に住んでるんだ、少しくらいいいだろ」とニヤニヤと笑います。
晶子は辛辣に父を批難しますが外は嵐で追い返すこともできないため逗留を許可します。汚れた服を着替えるため橋本に案内され浴室へと向かいますがどなくして橋本の悲鳴が上がります。風呂場で峰岸徹が首をつっていたのです。
その光景に晶子は倒れてしまいます。晶子は寝込んでしまうので3の展開のようにつなげてみましょう。
●黒幕
惨劇がはじまった屋敷の黒幕は雨宮美和です。彼女は高校時代に手に入れた魔導書を使い、人の精神を操ったり神格と交信し様々な情報や予知などを行い自らが思う世界を作ろうとしていました。
高校時代には「あなたが犯人と推理した人物(雨宮以外)」を操り集金を盗ませ、その濡れ衣を晶子にきせることで晶子を学校から追放したり、晶子の両親を操り佐山銑十郎に嫁がせたり、また銑十郎すら操り晶子には指一本ふれさせていなかったりしています。
そしてその動機は雨宮の歪んだ晶子への愛情からくるものです。雨宮は晶子を独り占めするためにこの無駄とも言える計画を実行しています。
これらの事実は晶子の持っていた『折れた翼の鴉』の手帳に事細かに記されています。
また神格への更新の際、銑十郎の体を媒介として使っているため佐山家の発展、ひいては晶子の成功のためにまだ生かしておかなければならないと考えています。薬物や魔術などで銑十郎は生かされている。
雨宮は魔術の使い過ぎで眼球が赤く充血し複眼のようになっている。そのためサングラスで隠している。みたいな感じで一つ。
▼結末へ
1の場合、晶子に罪の意識を持たせ操りやすくするために高校時代に窃盗を働かせています。また、晶子にあなたを殺させることで未練をたちきらせようと考えても居ます。あなたや橋本の死体は銑十郎を生かすための贄にしようと考えており、あなたが晶子を取り押さえたあとは、雨宮は銑十郎の部屋の隠し扉の奥に居ます。
2の場合は銑十郎を使いあなたを殺そうとしていましたが、失敗したため次はあなたの体を乗っ取ろうとしています。
3の場合では雨宮は晶子とあなたが再開し気持ちが再燃してしまったため、あなたの体を乗っ取ろうともしています。そしてあなたに成り代わり、晶子を支える存在になろうとしています。儀式のために倉庫から身動きの取れない橋本を引きずり出し、銑十郎の部屋の隠し部屋で儀式を始めています。
4の場合は精神操作で徹を殺しています。既に役立たずになっているためです。また雨宮はその後、徹や橋本、あなたも殺しその死体で銑十郎を永らえそうとしています。(あなたの体を乗っ取るでも良い)
1,2,3(4)の全ての場合でも
隠し扉は『折れた翼の鴉』の像の羽をもとの形に戻すと開きます。部屋についたら適当に判定やら描写やらで気付かせましょう。
奥に居る雨宮を取り押さえれば儀式は失敗に終わります。後始末は警察に任せることになるでしょう。
また延命の儀式やら体を乗っ取る儀式やらのために、中庭に奇妙なオブジェクトが設置されています。中庭の石像をいじっていたりすると暴発し、ゾンビのようなもの(今までの被害者)が現れたり、雨宮が御使いとか使役できたりするとピンチが増すのでいいでしょう(笑)。
また神格の子を宿していたりして救いのない感じにまとめても良いと思います。
ちなみに敗北したり雨宮に捕まったりすればロストエンドまっしぐらですがそんなもんでしょう。
また前半部分の犯人推理はおざなりにしておいて後半をはじめ、館の中から電話をかけたりして友人らから過去の事件の情報を集めるという遊び方でも面白いかもしれません。