CoC 1on1 緑色に溺れる


シナリオ:緑色に溺れる

 著:黒兎そよ @katatumuri

 たぶんCoC7で遊ぶシナリオ
 プレイ人数:PLとGMの1on1想定
 プレイ時間目安:2~3時間くらいかね

*テストプレイもしていないのでガバガバです。
*一応CoC7ですが別のTRPGでもできると思います。kutuluとかの方が雰囲気にあうかもしれません。あと一番最後にKP情報としてプロットまがいのメモを載せていますので何かの参考に。
*注意 本シナリオにはやや暴力的な因習、ちょっとだけ性的描写、死や病、差別的な環境などの描写があります。しかし、それらを助長する意図はございません。ご承知の上、注意して遊んでください。

※ 本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「新クトゥルフ神話TRPG ルールブック」

トレーラー

 キミの体には”緑色”がある
 キミは緑色”食べたい”
 山奥の過疎村、キミたちは二人だけの子ども。
 数年に一度の祭で……キミたちは緑色に溺れた人々の真実を知る。

PC共通 設定

 PCは双子の10代程度の子ども。双子だが二人の外見や性別はそれぞれ違っても良いし似ていても良い。
 二人の両親は小さい頃に離婚し、PC1とPC2は別々に引き取られ暮らしていた。父親が亡くなりPC2は村へと引っ越してきた。両親も祖父母も亡くなり、何年もたった現在がシナリオの舞台となる。

 PLにハンドアウトを選んでもらう。選ばれなかった方をKPが使用。

PC1 ハンドアウト

キミの体には緑色の部分がある。キミはこの村で育ち、村の人々には神の使いとして大事にされている。
*髪、肌、瞳、爪など体の緑色の部位は任意だが普段生活する際に見える位置が良い。
*村の中で育てられ外界をほぼ知らない。両親たちは亡くなり家族は双子のPC2だけだ。

PC2 ハンドアウト

 キミは緑色を食べたい衝動を持っているがそれは誰にも言えない。キミは小さい頃に父親を亡くし、離婚した母方の祖父に連れられこの村へと引っ越してきた。そして双子であるPC1と暮らし始めた。
*幼少期は父と外で生活していたため僅かながら村の外の感覚を持っていて良い。


Index

 
✎シナリオ本文

導入:朝と通学路

 過疎化が進んだ山間の村。数年前にダム決壊が起きたために、ますます人の数は減った。キミたちは村でたった二人の子どもである。両親に早くに先立たれ、村の庇護のもと二人で暮らしている。

 以降、選んだPC側の演出を行っていくこと。

PC1サイド

(PLがPC1を選んでいる場合はこちらのシーン)
 朝、起きたキミは双子のPC2と顔を合わせる。二人の朝はどんな感じだろうか。

 PC2はキミと違って村の外を知る人物である。キミはその事をどう思っているだろうか?

 PC1の考えを聞いている間もPC2はずっとPC1を見つめている。しかしPC1がPC2に近づいたりすると「学校へ行かないとならない時間だ。早く行こう」などと言ってふいっと顔を背ける。仲は悪くないはずだが最近、そっけないように感じるかもしれない
 *PC1「心理学」でPC2が照れているように感じる。

PC2サイド

(PLがPC2を選んでいる場合はこちらのシーン)
 朝、PC1と顔を合わせたPC2は衝動に抵抗する判定「意志(POW)」
 PC1に触れたくて仕方なくなる。それはすごく恥ずかしいような心地よいような奇妙な感覚がある。
 成功すれば我慢するか軽いスキンシップで済ませる。失敗すると少し激しいスキンシップになってしまう。

 *PC1がそれをどう感じるかは自由。その場ではどう感じているかは隠してもいい

PC1「学校に行かないと……」としばらくするとPC2に訴えるだろう。

通学路

 村を歩いているとPC1に対して年寄りたちが話しかけてくる。
村の年寄 「おぉ、PC1様。本日も健やかでいらっしゃいますね。なによりでございます」
村の年寄 「美しい緑です……PC1様、ありがたやありがたや」
 とPC1へは特別扱いをしてくる。この村では双子が生まれると一方を神の使いと崇める因習が残っているのだ。

 その印が、体の緑色だと言う。
 PC2には普通の子どもに対応するような感覚で接してくる。
 「PC2,お前はPC1様の隣にいられるだけでもありがたいことだぞ」
 「PC1様をしっかりお守りするのですよPC2」
のような感じだ。村に帰って来てからずっとこの調子である。


 PC1,PC2は 感覚判定 「心理学」「直感」

 村では当たり前の光景であるが違和感を覚えるかどうか。
 村では外界との情報接触が少ない。TVもネットも不自由だ。しかし無いわけではない。外への憧れを持つのなら少しずつ違和感を覚えるかもしれない。
 校門の側には身綺麗な格好をした老年男性が立っている。
校長先生「おぉ、PC1,PC2くん。おはよう」
 校長先生はしばらく村の外で過ごしていたこともあり、外の流行や物事にも詳しい。二人にとっては外の事を教えてくれる数少ない大人と言えるだろう。

 二人で学校へとたどり着くと次の場面へ。

祭り前日――

場面:学校

 教室は二人の席しかない。学校は元々は村出身の校長と赴任してきた一年目の若い女教師がたった一人。
 女教師「おはようございます。今日も一緒にお勉強しましょうね」

 僻地へとやってきたことにめげずに張り切る若い教師だ。他愛もないおしゃべりといつも通りの授業を終えた昼食の時間。給食として出されたのは盛りそばだった。山間でこれと言った特産品がない村にとってそばは唯一の特産物なのだ。

女教師「そう言えば校長先生がおっしゃってましたが、明日のお休みに村の祭? が開かれるそうですね」
「先生はまだここに来て日が浅いので良く知らないのですけど、お手伝いを頼まれたんですよねぇ」


PCたちは知識(EDU)判定・「地域の知識」

成功
 年寄りが話していた内容を知っている
 「そう言えば……」とあなたは年寄りたちが話していた内容を思い出しました。

  • 昔、水害を沈めた神様を奉る行事。それを怠っていたからダム決壊が起きた等とかなんとか。
  • 祭は明日でPC1は祭りの儀式に赴くと聞かされている
  • PC2は何も明日が祭ということは知っている
  • 大人に聞けばもう少し分かるかもしれない。

失敗
 前に開かれたのが生まれる前なので詳しくは知らない。

  • 明日、祭があるということだけは聞いている

女教師「そうですか、二人とも私と一緒ではじめての祭なんですね。これを機にもう少し村の人と仲良くなれるといいんですけど」と少し困ったように笑います。
*先生の困った顔に気がつけば、村が外からの人へはかなり塩対応だということに思い至ります。校長先生はそうでもないが、村人は外からの人を避ける傾向があります。


場面:放課後

 放課後の行動を決めましょう。単独行動も可能です。

■学校の中で過ごす

 学校にはキミたちの他、女教師と校長先生しかいない。二人で遊ぶこともできるし、NPCたちと話をすることもできる。以下のNPC設定などを参考に演出すると良い。

校長先生

60~70代男性。しゃんとして身綺麗な格好をしている。外で暮らしていた時期が長いので理知的で文化的。民俗学などに造詣が深い。家族を亡くしていて一人暮らし。外から来たPC2のことを亡くした孫のように思っている。校内ではPC1とPC2のことを分け隔てなく接している。村長とは幼馴染だが、外へと出ていたため暫く疎遠だった。
祭りのことを聞く:村の神様を鎮める祭りであること。山の川に由来する水神であること。神の子は十数年ごとに双子の片割れとして輪廻転生してくるという言い伝えがあり、その神の子が儀式をすることで水害がおさまるらしい。ダムができてからは水害は減ったがキミたちが生まれる前のダム決壊で再び祭りに目が向いている。

女教師

 この村では唯一の20~30代の住人。若く健康的。人当たりも良くPCたちにも魅力的に見える。
 村の人たちに馴染みたいと頑張っているが、閉鎖的な雰囲気に苦労している。
 (バックグラウンドは適当で良い)

■通学路&村の中へ

 舞台設定、村には学校、民家、ダム、神社(公民館含む)と時折くる移動販売の自動車くらいしかない。

村人たち

 PC1を神の使いとして崇めている。60代以上のお年寄りしかいない。朝と同様にPCたちに対応する。
 中年層から下の年代が全くいない。優しいがどこか閉鎖的で盲目的なきらいがある。
 村人は荒れた地を耕し、そば畑や野菜畑を作っている、川沿いやダム湖で山魚を養殖している。(自然で判定すると魚が異形になっていることが分かる)。ミドリムシを飲む風習がある。

村長

 60~70代男性。肌にイボが多く老け込んだ印象の老年男性。村人に対して威圧的な雰囲気だが、PC1には甘く振舞う。しかし、心理学などで様子を伺えれば「下心を感じるような下卑た甘さ」な気がする。
祭りのことを聞くと:神社でPC1に神の子の衣装を来て貰い、神楽舞の奉納やお神酒、村人たちにご馳走を振舞うということを話してくれます。滅多に食べられないもので村人も楽しみにしていると。


 帰宅したら次の日へ

次の日―――――

場面:祭

 ダムが決壊した際に社も壊れてしまったため、新しく建てた神社は真新しい。

 祭りは神社の前で鼓笛の演奏があり、酒盛り、そば打ちをして振舞うという、山村にならありがちな小さな催しだった。少し気になるのは打たれたのが「みどり色の盛りそば」ということだろうか。

PC2サイド

 (PLがPC2を選んでいる場合はこちらのシーン)
 PC2の前にも緑色の盛りそばが置かれている。PC2は無性に食べたいと思うだろう。
「このミドリ色がいいんじゃよ。……健康になぁ!」と酒に酔ったお爺さんたちが笑う。
「そうだよぉ、PC2ちゃん。ばあちゃんたちもこれを食べてたから若い頃はべっぴんさんだったんだから」とお婆さんたちも笑う。中身を聞けばミドリムシだとすぐ分かる。

しばらくすると校長先生に「おぉ、PC2くん。ここに居たのか。PC1くん……様が呼んでいるんだ」と呼ばれて移動することになる。

PC1サイド

 (PLがPC1を選んでいる場合はこちらのシーン)

 PC1は村人に社の中で着替えをさせられ、祭りの間は御簾の中に座っているように言われています。
 御簾の裏から外の祭りの様子が見えます。そば打ちや酒盛り、PC1の様子もしっかり見えています。

 しかしPC1はお清めと称されて、そばや食べ物は運ばれてきません。あるのは水だけの半分断食のような状態です。


 教師「あの緑のお蕎麦をはじめてたべたよ。ユーグレナって健康食品だものね。あぁ、ごめんなさい、PC1は大変ね……」と祭りの手伝いをしていた教師が話しかけてきます。
 「今日は皆さん、お酒が入っているせいか。だいぶ気さくに話しかけてくれて嬉しいよ」と教師も酒を飲んでいたのか顔を赤くして笑っています。
 校長先生「おぉ、こんなところに先生。すまないが向こうの村長たちの机にもお酌に行ってくれないかい」とやってきます。
 PC1は空腹にだいぶ堪えてきました。ここから動けなくともPC1を呼ぶことはできるでしょう。先生たちに伝言をお願いできます。

PC1、2ともに演出

 PLが担当している方に聞こえてくる話声として場面:祭内で適宜演出を入れよう
 キミが社へと歩いて行く途中(外の様子に聞き入っていると)、お年寄りたちの声が聞こえる。

「本当に緑色……健やかに……美味しそうに実られた」
「これで……様の祟り……沈められる……」
「外からの……どうする……やはり」
「もう村に……はない。苗床になってもらおう……若くて柔らかい……」

社で合流 PC1PC2

 PC1とPC2は合流できます。
 PC1はPC2に食事を持って来ることを頼めます。女教師に頼むのにはうまく言いくるめたり、説得する必要がでてきます。どちらも簡単な判定でばれずに食べ物を手に入れて空腹を満たすことができるでしょう。
 社の中にはPC1、PC2と時折、女教師がやってくるくらいですのでばれずに済みます。

場面:夜

 祭りはやがて夜になり、篝火(かがりび)が焚かれ始めます。
 仄かな火の灯りしか届かない薄暗い中、人々は酒に酔いゲラゲラと笑い合い、歌いあっています。

 村長「さぁ、祭りも仕上げぞ!」
 村長の声に村の男たちが立ち上がり声を上げます。

「ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ……」
「ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ……」
「ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ……」
 ……

 PC1とPC2の目の前にはカエルの顔をした村人たちが立っています。
 二人とも精神的抵抗の判定 San(1/1D6) をします。失敗するとショックを受けるでしょう。

 村長は「さぁ、祭りの最後。PC1さまを皆で食べよう! 我らの呪いを解くために!」と叫びます。
 村人たちは手に刃物(鉈や包丁、斧)を持ってPC1へ近づいてきます。
 PC1は恐怖に見舞われるでしょう。
 PC2はPC1が恐怖に見舞われて動けないことに気が付きます。

 社の中で酒に酔っていた教師が異変に気が付いて叫び声を上げます

 教師「ば、化け物っ!!」
 村人「この小娘、騒ぎ立ておって!」と暴力を振るいますが
 校長「やめなさい。暴力を振るってはいけない」
 村長「そうじゃ、バカ者ども。その小娘はまだ苗床としての価値があるんじゃ」と他の村人に止められます。

 女教師の騒ぎ声で驚き動きを止めた村人たちの隙をつくことでPC1とPC2は逃げ出せるでしょう。

 判定(STR)「力づくで突破する」か(DEX)「素早く逃げ出す」

場面:森へ逃亡

 判定(DEX)追跡を逃れる。 「隠密」森に身を隠したりしながら逃げることも可能。
 判定に成功すればなんとか逃げきれます。失敗してもHPを1D3点減少して逃げることができます。
 村人に追われる様にして山の中へと逃げ込むとやがて森が開けダム湖の側までやってきます。
 暗闇の中から月明かりがダムの水面に差し込んでいます。近づくと静かな鏡のような水面にキラキラと反射しています。ここまでくれば暫くは平気でしょう。

PC1サイド

 あなたを助けようとしてくれたPC2に月灯りが当たります。目の前に居たのは「カエルのような顔のPC2」でした。PC1は精神的抵抗を受けるでしょう。それとも受け入れられるでしょうか?
 San(0/1D3)
 成功するとPC2は今も何かに抗っているのが分かります。とても苦しそうです。
 失敗すると恐怖や嫌悪感に飲まれてしまいます。

PC2サイド

 あなたはPC1の事が食べたくてしかたありません。
 PC1「ねぇ、PC2もそうなの?」と聞いてきます。月灯りに照らされた水面にあなたの顔が映ります。
 それは「カエルのような顔のPC2」でした。PC2は精神的抵抗を受けるでしょう。
 San(2/1D6)
 またここで失敗すると続く衝動判定にも失敗します。

 あなたはPC1が食べたくて仕方ありません。体をその体液を口に含みたいのです。
 意志(Pow)で判定 失敗するとPC1に襲い掛かってしまいます。

 さて、村長の話を思い出すとPC1を食べれば呪いが解けるようです。PC2がPC1に襲い掛かるか何らかの方法で体液(血や唾液など)を含むとカエル化は薄れ顔が元に戻ります。ただし目がカエル化していたり、鱗のようなものが残ったりします。

決断

さてPC1、PC2はどうしたいかを決めましょう。
 逃げる選択でもPC1を犠牲にする選択でも構いません。それを実行することでシナリオは終了します。
 そのままではPC2の姿は完全には治りません、顔や目を隠して暮らすことになるでしょう。


他判断材料として

村人がどうなるか:呪いが解けないとあと数年でミドリムシを得られない村人のほとんどがカエル化とともに死に至るでしょう。残るのは特権を持つものだけでしょう。
女教師がどうなるか:そのままだと村の新しい神の子を授かるまで「苗床」として飼われることになるでしょう。
校長先生は中立です。しかし対応次第では女教師救出や脱出に手を貸してくれます。
村人と争うなら:村人はカエルの異形(深きものの交雑種p300扱い)ですが年輩も多いので上手く立ち回れば暴力で解決もできるかもしれません。隙をついて逃げたり、女教師を助け出すこともできるでしょう。しかし村から出るまでは死と隣り合わせの逃亡劇になります。村人は女教師以外の生死は問わない構えです。
もしPC2がPC1に似ているなら身代わりになることもできますがもちろん人々の呪いは解けません。


KP情報:プロット

 キーワード:盛りそば 因習 ダム決壊、ユーグレナ、カエル、双子、かがり火、輪廻

 山間の村。川が流れダムになって居る。水源にはこの地特有のユーグレナミドリムシ)が生息している。あまり土地が豊かではないのか、そばと少しの野菜しか育たない。川には魚が住んでいるが変容している。ミドリムシを飲む、そば(盛りそば)に練り込むなどして一般化している。
 因習として双子の片割れを神の子として扱う。神が輪廻転生して双子の一方に宿る伝承がある。
 廃れていた古い祭りがダム決壊の後に復活した。祭の夜には篝火を焚いてある儀式をする。
 実はこの地の人々はカエル人(深きものの交雑種みたいなやつ)で、神の子を食べることで精気を養い生きながらえている。呪いによりカエル化が進みすぎると山では生きていけない。
 村人はダムのそこに沈む水神を崇めている。

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